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 値上げ交渉にまつわる話

事業DDの結果、不採算となっている商品や客先が判明することがあります。 たいてい、原価計算の仕方が分からないなどの理由で、社長自身も「不採算になっていることを知らなかった」など、正確に把握することなく放置してきたケースが多いです。 このようなケースでは、①撤退、②社内の改善による原価低減、③販売単価アップといった手法をとることになります。今回は③販売単価アップにまつわる話を取り上げます。

 A社では、得意先X社との取引が赤字であることがわかりました。社長としては、材料費と外注費に対して利益は出ているとの言い分でしたが、労務費を考慮すると明らかに赤字。 生産量が減っているにも関わらずラインの人数が多いままだったことが要因でした。  A社は、X社に対して単価アップを要請することにしました。現状の原価テーブルを基にどれだけ赤字になっているかを示し、またこれが無理であれば数か月の猶予をもって他社に転注してください、と交渉したのです。 交渉には我々MPSも支援のため同席するなどしましたが、得意先の担当者からは「社長ははっきりと要望を言ってくれない方なので気になっていた。他社は値上げを要請してくるのにA社は大丈夫かな、と」と言われたものです。 結果的には、大幅な値上げが実現できました。

 こうしたA社の事例からも分かる通り、「値上げの根拠を明確にし」「選択しを示しながら」「誠意をもって交渉する」ことで、値上げが実現することは多いです。 ただし、商品や製品自体が他社で代替不可能だったり、生産設備(生産量)に優位性があるなど、得意先に必要とされるビジネスモデルとなっていることが前提になります。  「根拠を明確にする」という点については、赤字であることを示すなどイメージしやすいと思いますが、しっかりとした資料の提出が必要なのは、得意先の組織の中で「上司や本社への説明に使ってもらうため」という意味もあります。 大企業の場合、全国に支社を展開しており最終決裁は本社で、などということは多いです。

 「選択肢を示す」という点については、値上げ1本で交渉するのではなく、値上げがダメだった場合の代替案を示すことが有効的です。 A社の場合は転注を持ち出して背水の陣作戦を敷きましたが、新しい製品の追加取引や、(安い)材料への転換など、利益を確保する他の方法を示すこともできます。  「誠意をもって交渉」に関しては、B社の失敗例があります。複数の得意先に対して値上げのお願いを書面にて一斉通知をしたのですが、その後のフォローが不十分だったためにいくつかの得意先からは怒りを買ってしまい、交渉がうまくいきませんでした。  結果、一部に対しては値上げどころか結果値下げをして引き留めるという本末転倒なオチもあり、大切な得意先であれば、しっかりと向き合って交渉することが重要なのは言うまでもないでしょう。