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取引先への単価アップ交渉をキーに経営改善した事例

<企業概要>

事業内容:自動車内装パーツの製造業
従業員数:70名
売上高:10億円

<当社の現状>

最近まで工場増設や設備更新を繰り返し、順調に売上拡大を図ってきた当社。長らく、主要顧客であるY工業(60%)とZ工業(30%)が売上の大半を占め、安定的な収益基盤となってきました。

ところが、リーマンショックや東日本大震災による国内需要減、尖閣問題による中国での日本車不買運動と大きな外部環境の変化、また自動車メーカーによる海外での現地生産促進により、当社売上も徐々に減少傾向に。また、安定的な受注を見込んだ薄利多売モデルだったため、すぐに損益分岐点売上高割り込み赤字に陥ってしまいました。

技術力は取引先からも高く評価されている当社でしたから、社長はしきりに「外部環境のせいで・・」「Y工業やZ工業がよくならない限り、当社の改善も無理」という言葉を繰り返すばかりでした。

<当社の問題点>

調査の結果、社内の原価管理に大きな問題があることが分かりました。大量生産しているZ工業向け主要製品が不採算だったのです。熟練した技術が必要な製品であり、当社以外に製造できる工場もないため受注単価が高く、社長は自信をもって「利益に貢献している」と思っていたそうです。

しかし突き詰めてみると、これは原価管理の問題だけではありませんでした。そもそもこの単価がZ工業からの「指値」で決まっていたこと、さらには製造してから単価が決められていたことが判明し、Z工業とのいびつな「パワーバランス」と、それを当たり前に思っている経営、という根本的な問題が明らかになっていったのです。

<改善への道>

何より、すぐにでも大きな不採算を出している当該製品の単価改定を行わないことには改善はないと考え、単価アップの交渉を行いました。逆に言えば、当該製品を採算ラインに引き上げれば全社が黒字化することがわかっていました。

一方で、万が一交渉の末にいきなりZ工業との取引がなくなった場合、当社の事業立て直しはかなり難しくなることもわかっていました。そのため、交渉にあたっては以下の方針で臨むことにしました。

①当該製品が不採算で赤字の原因となっていること、このままでは当社は事業継続ができない可能性があることを伝え、単価アップをお願いする。
※当該製品は技術的に当社以外の代替工場を見つけるのは難しいため、Z工業にとっても当社が事業停止することは望ましくないはずである。

②今回の値上げはあくまで一時的なものとし、当社の黒字化達成後は、不良率やコスト低減に努め、再度単価低減も視野に検討する旨を伝える。

結果的に値上げは成功し、当社の黒字化や資金繰り安定が実現しました。

しかし、上記②のような提案をして大丈夫だったのか?実は、Z工業製品の値上げは「本当の改善までの時間稼ぎ」という戦略で臨んでいたのです。仮に単価アップができたとしても、Z工業との関係性や、ひいては先細りの自動車産業への依存体質を保持したままでは、飛躍的な改善・成長が見込めないことは明らかでした。したがって、中期目標として「自動車業界依存の脱却」「民間商業施設分野への進出」を目指すことを決め、値上げをしている間に不退転の覚悟で新分野での収益基盤確立を図る戦略でした。

その後、早急に営業部隊を構築し、計画通りに新分野からの継続的な受注に成功しました。しかも、自動車パーツに比べて格段に粗利率が高く利益底上げに大きく寄与。当社は経営を安定化させました。

後日談ですが、Z工業製品の単価低減の再見直しを行ったタイミングでは、Z工業の希望する単価では製造が難しい旨を伝え交渉した結果、双方合意のもと、取引は中止となりました。しかし、その頃には当社は別事業の収益基盤ができていたため、多大なダメージを受けることはありませんでした。現在では、売上依存度をY工業50%、Z工業5%まで下げ、当社は薄利多売のビジネスモデルから脱却しつつあります。