Case 事例のご紹介
過大債務企業の一部事業を活かし、第二創業(事業承継)を果たした事例
■企業の概要
事業内容:スポーツ用品・販売業
従業員数:6名
売上高:1億円
■ご相談前の状況
創業約30年の歴史を持つスポーツ用品製造・販売業。日本よりアジア中心にブランド力を維持し、一部のヘビーユーザーを中心に固定的な顧客を持っていました。創業者のカリスマ的能力により一時は業績を大きく伸長。しかし、国内でのスクール運営・海外関連ビジネスなど事業拡大を試みていたとき、当該スポーツ人口の減少など外的要因も加わり売上が減少。過大債務が残されていました。
■企業の問題点
売り上げ減少に焦る経営者は資金繰りで頭がいっぱいになっており、どの事業が利益を生んでいるのか、どの事業が問題なのかを把握できていませんでした。後継者の息子が営むスポーツ用品販売との連携もとれていない状態でした。会計事務所は資金繰りを含め寄り添っているものの、目前のキャッシュアウト・過大債務への対応への不安もあるとのことで、当社へのご相談に至りました。
■解決策
1~2ヶ月後に資金繰り破綻が迫る中、取り急ぎ仮説優先で再生(第二創業)への道を模索し、以下の2点をベースに解決策を模索しました。
①経営者が70歳を超えていたこと、かつ当該スポーツ用品の将来性が厳しいことから、現体制での過大債務の返済は困難。現経営者が一定の責任を取った上で、優良事業を第二創業という形で息子が引き継ぐことが企業・地域のためにもなる(現政府の考え方にも近い方針)。
②拡大しすぎた事業は、強みであるアジアでのブランド力を活かした事業だけを残す。売上が半分程度になることは覚悟する。
以上を踏まえ、MPSを中心にFA(フィナンシャル・アドバイザー)・弁護士も交え緊急再生チームを組成。息子を代表者とする第二会社を設立し、優良事業のみ事業譲渡を行いました。そのうえで弁護士を通して現債権者と交渉し、現法人の特別清算および最適な破産を目指したのです。
事業譲渡は、海外の商標権移管の問題で少し時間がかかったものの、全般的には円滑な譲渡を達成することができました。
本件は時間の猶予が残されていなかったこともあり、残念ながら自己破産・現経営者個人も破産を申し立てることとなりました。しかし、これは初回のご相談時より覚悟していたことであり、無資産であることも確認しながら話を進めておりました。また、金融機関にも状況を丁寧に説明し、円滑なクロージングを図ることができました。
現在、事業は第二創業という形で後継者が引き継いでいます。しかし、旧経営者は顧問として、実質的には今までとは変わりなく活躍されています。
経営改善計画の策定を機に、新たなビジネスモデルへの変革に着手した事例
■企業の概要
事業内容:ガソリンスタンドの経営、ガソリン・重油等石油製品の販売
従業員数:18名
売上高:5億円
■ご相談前の状況
地方都市にてガソリンスタンドを営む企業。人口減少・自動車保有台数の減少などによる市場縮小に加え、セルフ化の波による低価格化・価格競争激化といった厳しい外部環境にさらされていた。ガソリンスタンドという事業自体が薄利多売で、業界全体として収益を出しにくいモデルである。既に5年以上赤字が続いていた。さらに社長は資金繰りに追われる毎日で、営業活動・現場管理が放置されていた。
一方、法人へのオイル類の直売部門は、元々担当していた社長が時間を割けなくなり専任担当者を置いて取り組んでいた。重油など利幅の薄い取引が増え、利益貢献につながっていない状態だった。
加えて、過去の取引の失敗により多額の売掛金滞留を抱えている背景もあった。買掛金支払いの遅延から、不利な仕入条件を飲まざるを得ないなど悪循環。借入金を増やすことで赤字を補填していたものの、限界が近づいてきていた。
■企業の問題点
まずは、返済困難→借入増→さらなる返済困難という悪循環と、社長がほぼ資金繰りに奔走するだけの現状を脱するべく「返済ストップ」を説得。これにより、社長の時間を未来の「経営」のために割けるようになりました。
そのうえで、事業改善のキーを探しました。「ガソリンスタンド」というビジネスモデルの延長では、どんなに努力しても先細りであることは明確です。そのため「脱・ガソリンスタンド」のモデルを模索することを最重要テーマに、社長と対話を重ねていきました。
■解決策
対話の中で見えてきたのは、かつて社長が営業をしていた頃の法人向けオイル直販事業は、高収益を出していたということです。現在は別の担当者が担当していますが、人脈もなく営業スキルも不十分で利益につながっていない状態だったのです。
これを手掛かりに外部環境(機会・脅威)を再確認しながら、社長の営業復帰など内部環境の変革で事業を伸長できるかを検討・検証を重ねました。結果、このプランが現実的であることがわかったため、具体的な計画を始めるに至ったのです。
ただし、ガソリンスタンド事業を急に撤退するわけにはいきません。ガソリンスタンド事業は店舗別・商品別に管理会計を充実させながら、コスト削減・固定客獲得および油外商品の販売拡大などにより、赤字脱却を図る計画としました。
主な販売先や営業手法を変えるだけで、ビジネスモデル転換の兆しが見えてきました。単なる業務改善だけでは限界があるケースでは、こうしたアプローチが有効です。そしてそのヒントは、コンサルタントの「突飛な発想力」ではなく、会社や経営者自身の中に眠っていることが多いのです。
製造原価低減により改善に成功した事例
■企業の概要
事業内容:陶磁器製品製造業
従業員数:80名
売上高:10億円
■ご相談前の状況
60年以上の業歴を持つ企業。同業他社が事業を縮小・廃業する中、複数県にまたがって製造工場を建設するなど、業容拡大を目指して積極展開を続けてきましたが、直近数年間は主要な大手販売先との取引が急減し、そのほかの売上減も歯止めがかからず赤字に陥ってしまいました。
また、もともと食卓用や厨房用などの製造を手掛けていましたが、年々低下する売上を補うため、業務用分野への進出に着手。しかし、売上は思ったように伸びず、初期投資回収ができる前に大手顧客との取引減等に見舞われ、急激に厳しい状態に追い込まれてしまっていました。
■企業の問題点
社長は常に「売上拡大」によって収益海前を図ろうとしていました。また、工場拡大で膨らんだ固定費を賄うため、がむしゃらに案件を取り、さらなる拡大を目指していました。そのため、案件ごとの収益性は全く管理されておらず、調査結果では「全体の2割が不採算案件である」ことが判明しました。
■解決策
まず、現状の売上と比較すると製造設備が余剰であることが明らかでした。とはいえ、社長は精算設備を縮小してキャパに余裕がなくなることへの不安を感じていたため、生産スケジュール等を細かく組み直しシュミレーションして見せるなど丁寧に検証。そのうえで、保有する3工場のうち1工場を閉鎖することとしました。
これにより、工場家賃以外にも水道光熱費(24時間稼働のため経費に占めるシェアが大きい)や間接人件費(管理・検査・工場の水まし的な人員)を大幅に減らすことができ、事業全体の固定費を2/3に下げることができました。
これだけで、2ヶ月後には単月黒字化を達成し、資金繰りも安定化しました。
取引先への単価アップ交渉をキーに経営改善した事例
■企業の概要
事業内容:自動車内装パーツの製造業
従業員数:70名
売上高:10億円
■ご相談前の状況
最近まで工場増設や設備更新を繰り返し、順調に売上拡大を図ってきた企業。長らく、主要顧客であるY工業(60%)とZ工業(30%)が売上の大半を占め、安定的な収益基盤となっていました。
ところが、リーマンショックや東日本大震災による国内需要減、尖閣問題による中国での日本車不買運動と大きな外部環境の変化、また自動車メーカーによる海外での現地生産促進により、売上も徐々に減少傾向に。また、安定的な受注を見込んだ薄利多売モデルだったため、すぐに損益分岐点売上高割り込み赤字に陥ってしまいました。
技術力は取引先からも高く評価されている企業だった為、社長はしきりに「外部環境のせいで・・・」「Y工業やZ工業がよくならない限り、当社の改善も無理・・・」という言葉を繰り返すばかりでした。
■企業の問題点
調査の結果、社内の原価管理に大きな問題があることが分かりました。大量生産しているZ工業向け主要製品が不採算だったのです。熟練した技術が必要な製品であり、他に製造できる工場もないため受注単価が高く、社長は自信をもって「利益に貢献している」と思っていたそうです。しかし突き詰めてみると、これは原価管理の問題だけではありませんでした。
そもそもこの単価がZ工業からの「指値」で決まっていたこと、さらには製造してから単価が決められていたことが判明し、Z工業とのいびつな「パワーバランス」と、それを当たり前に思っている経営、という根本的な問題が明らかになっていったのです。
■解決策
大きな不採算を出している当該製品の単価改定を行わないことには改善はないと考え、単価アップの交渉を行いました。逆に言えば、当該製品を採算ラインに引き上げれば全社が黒字化することがわかっていました。一方で、万が一交渉の末にいきなりZ工業との取引がなくなった場合、当社の事業立て直しはかなり難しくなることもわかっていました。そのため、交渉にあたっては以下の方針で臨むことにしました。
①当該製品が不採算で赤字の原因となっていること、このままでは当社は事業継続ができない可能性があることを伝え、単価アップをお願いする。(当該製品は技術的に代替工場を見つけるのは難しいため、Z工業にとっても事業停止することは望ましくないと判断すると想定)
②今回の値上げはあくまで一時的なものとし、当社の黒字化達成後は、不良率やコスト低減に努め、再度単価低減も視野に検討する旨を伝える。
結果的に値上げは成功し、企業の黒字化や資金繰り安定が実現しました。しかし、上記②のような提案をして大丈夫だったのでしょうか?
実は、Z工業製品の値上げは、「本当の改善までの時間稼ぎ」という戦略で臨んでいました。仮に単価アップができたとしても、Z工業との関係性や、ひいては先細りの自動車産業への依存体質を保持したままでは、飛躍的な改善・成長が見込めないことは明らかです。
したがって、中期目標として「自動車業界依存の脱却」「民間商業施設分野への進出」を目指すことを決め、値上げ交渉をしている間に不退転の覚悟で新分野での収益基盤確立を図る戦略でした。その後、早急に営業部隊を構築し、計画通りに新分野からの継続的な受注に成功しました。そして、自動車パーツに比べ格段に粗利率が高く、利益底上げに大きく寄与した結果、経営の安定化につながりました。
後日談ですが、Z工業製品の単価低減の再見直しを行ったタイミングで、Z工業の希望する単価では製造が難しい旨を伝え交渉した結果、双方合意のもと取引は中止となりました。しかし、その頃には別事業の収益基盤ができていたため、多大なダメージを受けることはありませんでした。現在は、売上依存度をY工業50%、Z工業5%まで下げ、薄利多売のビジネスモデルから脱却しつつあります。
事業承継を経営改善の契機とした事例
■企業の概要
事業内容:食品製造業
従業員数:30名
売上高:4億円
■ご相談前の状況
創業以来50年の歴史を持ち、独自製法の開発や取引先スーパーの成長に合わせ、製造量、売上を増加させてきました。ところが、直近10年間は大口取引先の離反や原価上昇により営業赤字が続き、経営的に苦しい状態に陥っていました。
■企業の問題点
現社長は、業績悪化に対し、とにかく売上増加を持って挽回させようと躍起になっていましたが、調査の結果わかったことは、売上増の一方で条件の悪い取引を増加させ、結果的に赤字を増幅させていたことでした。社内では、取引ごとの採算管理をしていなかったため、実態を把握すらできていませんでした。また、工場はベテランパート従業員がまわしていましたが、過去のやり方を踏襲するのみで、長い期間改善は行なわれず、結果的に手作業でネックとなる工程があり、手持ちや滞留が発生していました。
■解決策
調査結果に基づき、当社からコストダウンを含めた改善の案を提示しました。ところが、売上増加により成長させてきた成功体験を持つ社長自身はその改善策に懐疑的で、中々首を縦に振りませんでした。
そこで、将来の会社を担う後継者である専務に
「これをやらなければジリ貧となること」
「このままでは社長や専務の個人資産を毀損し、また結果的に従業員の生活も守れなくなること」をお話しました。
専務は「ここでやれなければチャンスはない」と覚悟を決め、これまで遠慮していた社長への進言を行ない、自身が主体となり改善プロジェクトに取り組みはじめました。社長には、プロジェクトから出た提案に時にはアドバイスをしながら承認し、見守る立場となっていただきました。
この取組みにより、これまで指示待ちだった各部門の責任者が自発的に課題解決にあたるようになり、現場主導の改善が進みました。製造面では工程改善により製造原価を下げることができ、営業面では商品別の採算性を把握したことで利益重視の営業活動に切り替え、結果的に不採算製品の置き換えが実現していきました。
結果、2年目には営業黒字となり、その1年後には専務が社長に就任しました。社長自身も事業承継を受け入れ、現在は相談役として承継後の事業を見守っていただいています。
社内コミュニケーション改善で組織が活性化した事例
■企業の概要
事業内容:専門書の出版、広告制作・代理店
従業員数:20名
売上高:3億円
■ご相談前の状況
専門書の分野では開拓者として認識されるほど業歴は長い知名度の高い企業でしたが、昨今の出版不況を受けて業績が低迷。直近期では、創業以来、初めて賞与を支給できず、従業員のモチベーションは下降気味でした。また、広告制作事業だけは利益を出していたのですが、当事業の従業員においては「自分たちは利益を出しているのに・・」と、さらに不満を増幅させていました。
一方で社長は、生え抜きの社員から抜擢された2代目で人柄は良いものの、リーダーシップに乏しい面があり、雰囲気が悪化する社内をまとめきれずにいました。
■企業の問題点
現時点で、従業員はモチベーションが低下し悪循環に陥っているものの、スキルや意識は高いと見受けられた為、改善させるには組織・従業員の活性化が最重要テーマだという仮説のもと「BasMos」というアンケートツールを用いて、従業員の基礎力・満足度調査を実施しました。
結果、基礎能力は全国平均よりも総じて高いものの、満足度は相当に低いことがわかり、特に経営方針が明確でないなど経営層のマネジメントに対する不満が一番多いことがわかりました。また、役員ヒアリングからは、役員同士のコミュニケーションも良好とはいえないことも判明しました。
■解決策
従業員の離反を招くリスクはあったものの、当社コンサルタントがファシリテーターとなり、以下の議案で全社員出席の会議を実施しました。
①コンサルタントから会社の概況報告(外部環境・内部環境・財務状況等)
②社長から今後の経営方針の発表
③(埋もれた資産を活かした)新規事業の検討
④経営に関する質疑応答と意見交換
企業の厳しい現状もつまびらかにしたわけですが、元々優秀な社員が多かったためか、不満や離反を招くことはなく、むしろ現状や経営方針を理解できたことで満足度が上がり、協力体制や一体感を醸成することができました。
出版事業については、縮小均衡の方向を明確に打ち出しましたが、内製化の促進等による改善を進め、減収増益の見込みとなっています。各改善施策を進めるにあたり、各自の業務量は増えることになりましたが、被害者意識が噴出することもなく、前向きに取り組むことができた結果と考えられます。
会計事務所のMAS獲得につながった事例
■企業の概要
事業内容:建材卸売業
従業員数:15名
売上高:6億円
■ご相談前の状況
地域の老舗名門企業である企業だったが、一時の景気の回復やオリンピック需要等で建設業界に明るい兆しが出たことから、多くの同業他社でもその恩恵を亭受している状況にもかかわらず、そうした追い風を業績向上に結び付けることができていませんでした。
以前、企業では経営計画を立てていたのですが、それを下回る状況が続いており、そんな中、もともと税務顧問でもあった地元会計事務所と当社が協業することで経営改善計画策定支援をするに至りました。
■企業の問題点
当社が行った調査の中で分かってことは、極度のワンマン経営体質で社長が末端の従業員まで頻繁に指示を出していたことから、中間管理職の権限や責任が不明確となり、存在価値が希薄な組織運営となっていたこと。そして、従業員たちが精神的に疲弊している現状でした。
顧客基盤や技術は確かなものを持っているのにも関わらず、社内の人や組織の活用不足で企業の強みを活かせずにいた典型モデルでした。
■解決策
はじめに、全社参加の経営計画発表会を開催し、会社の現状と今後の方針を社長の言葉で明確にしました。
さらに、会社の課題を明確にして解決策を見出し、業績の安定と向上を図ることを目的とした経営会議を新設。社長、幹部社員、そして会計事務所と当社コンサルタントが参加し運営していきました。この会議を通じて、幹部社員主体で議論や改善を進めていく体制づくりを進めました。さらに、営業所別、個人別の目標数値を明確にし、一部インセンティブも導入していきました。
こうした施策を重ねることで、1年目には支店長たちは自らの役割を認識し、マネジメント面で機能するようになっていきました。また、業績面では翌期への仕掛り(仕込み)案件が多くなり、希望を見出せる状況となりました。こうした成果を積み重ねることで、経営者に加え、メインバンクからの信頼を勝ち得ることができました。
半年程度は当社が主体で実行支援を続けていたものの、その後は会計事務所が直接MASによる支援を続けています。